隠し事をしないと言うルールの下で暮らす家族の、崩壊と再生を描いたブラック・コメディ。
ああ何だろうこの見終わった後の気持ちは。何だかものすごく痛いんだけど、どこにでもあるようなものを見ている気分だった。他人の家庭を覗いている様な。
自分の過去や自分の母親を反面教師にしながら、理想の家庭を作り上げた結果が家族の中に秘密は持たないはずだったのに、実際の家族はそれぞれが言えないような秘密を持っている。ルールを作った母親までも。言わなくていいことばかりを食卓を囲んで語り、言わなければいけないことは言わない。ものすごく見ていて可笑しく、不自然な家族だった。それが理想だと思い込むことが幸せとは限らず、そんな不自然な中で暮らす家族は屈折していき、不満がたまり、吐き出せない気持ちを外で秘密に変えているような感じがした。
溜まりに溜まった不満をぶつけ合う誕生日パーティのシーンの迫力はすごい。「あんたさぁ、死ねよ」「お母さん、もう死ねば?」なんてそれまで完璧な笑顔の仮面をかぶっていた主人公の口から吐かれるそのギャップが、鳥肌が立つような気持ちになる。夫や娘、息子たちの秘密も気づいていてそれを暴いて暴いて暴いて。母親への積もり積もった不満をぶつけて。
実際、母親に愛されなかったんだと小泉今日子演じる主人公が思い込んでいたのか、本当に愛されていなかったのか分からなかった。だけど、思い込むことで記憶が書き換えられていたのは事実。逆に自分との思い出が母親の中で毎日いい方へ書き換わっていたのも印象的だった。
今まで抱えていた不満をぶつけ合って、吐き出してしまった家族は、再生され新しく生まれ変わる。生まれ変わることが出来るのは、家族だから。家族だからやり直すことができる。たとえ繰り返したとしても。不満を吐き出しぶつけあうことで再生した京橋家。帰りのバスの中での会話が非常に良かった。理想なんかに捕らわれなくても、やっぱり家族なんだと思った。誕生日を祝う電話を受けて、再生した主人公エリコ。庭で血の雨を浴び、血まみれで泣きながら叫ぶ。新生児がそうであるように、新しく生まれ変わったんだと思う。思い込んでいたものや抱えていたものが一気に崩れて。
帰宅した家族が開かないドアの前でしている会話を聞いて、涙が出た。その涙は感動の涙とは違う。何故だか分からないけれど、ものすごく涙が出た。瞬間的にあふれ出した涙だった。
小泉今日子を初めとして、女性陣の好演がよかった。永作博美、ソニン、大楠道代など非常に迫力ある演技でした。小泉今日子がコンビニで娘に肩を叩かれて振り返るシーンの凄みは強烈なものがある。鈴木杏が援助交際は悲しかった(´Д⊂ヽ
豊田利晃監督の作品は以前ポルノスターを見たことがあるけど、あれは何かものすごく意味が分からない上に不快な気持ちにしかなれなかった。これもどっちかというと不快寄りな映画だとは思うけれど、非常に深くて考えさせられた。心にくる。オープニング、団地がぐるぐる回っていたり、回想シーンが横向きだったりする独特のカメラワークにはセンスを感じた。酔いそうだったけれどw
2007-03-13 (Tue) |
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